【こんな症例も治りますシリーズ 549】 犬の『 ぶどう中毒 』も 適切な診断と治療で治します

 

↑ 上の写真は、犬とブドウとレーズンです。
■ 両者の関係は悪く、犬にブドウやレーズンを絶対に与えてはなりません。
★ 理由は、本文をお読みください。

 

参照サイト:

https://bit.ly/3XkjC3Y

 

犬 2歳 5Kg オス(去勢手術済み)

 

【 誤って、ぶどうを食べちゃった 】ということで来院されました。

 

◆◆ 飼い主様からお話を伺ってみると、『 1時間前に、子供がかじって床に落とした“ ぶどう ” (1/4個)を食べてしまって。。。

 

今のところ元気もあり、何の症状もないのですが、どうしたらいいですか? 』とのことでした。

 

 

■ ワンちゃんはブドウを食べると『 急性の腎障害 』を起こし、最悪の場合、死に至ります(ぶどう中毒)。

 

 

■ 症状としては、嘔吐、下痢や食欲低下、震え、呼吸速拍などもみられ、また、腎障害を起こすと、血液検査では、腎機能の指標となるBUN(尿素窒素)・CRE(クレアチニン)の急激な上昇が認められます。

 

 

■■ ぶどう中毒の原因物質としては、農薬、カビ毒、ぶどう由来の未知の成分など考えられていますが、実はぶどうの何がワンちゃんにとって中毒になるのか、詳しい原因は分かっていません。

 

 

■ また、研究者らの報告によれば、体重3Kgの犬に換算すると、ぶどう2~3粒、レーズン50粒という報告もありますが、実際に、たった1粒で中毒を起こしてしまう犬もいれば、3粒食べても症状が起きない犬もいます。

 

 

★★★ ですから、『 ぶどう中毒では死亡する場合もあるという事実 』を考えると、『 少しくらいなら大丈夫 』、とは考えない方が良いと考えられます。

 

 

 

■ 検査としては、血液検査・尿検査・超音波検査・レントゲン検査などを行います。

 

■ また食べたすぐ後であれば、ブドウが体内に吸収される量を少しでも減らすことを目的に、催吐処置を行うこともあります。

 

■ 治療としては、急性の腎障害の重症度により異なりますが、血液検査などで状態を確認しながら、輸液療法・電解質補正・利尿剤・リン吸着剤などの治療を行います。

 

 

※ ただ、気を付けなければならないのは、腎障害が軽いまたは症状が現れない場合でも、時間が経過すると腎障害が現われたり進行したりすることがあることです。

 

 

 

■■■ さて、このワンちゃんの場合、ぶどうを食べてからあまり時間がたっていないこともあり、まずは胃の中にあるぶどうを吐かせようとしましたが、朝食を食べているとのことから、嘔吐による誤嚥性肺炎等のリスク避けるために、催吐処置はせず、活性炭を飲ませて、中毒物質を除去し、半日間の入院をして静脈内への点滴を行うとともに、症状観察、血液検査によるBUN(尿素窒素)・CRE(クレアチニン)等のモニタリングを実施しました。

 

 

 

■ その結果、ブドウを摂取して10時間後までの間、嘔吐等の症状、BUN(尿素窒素)・CRE(クレアチニン)・SDMA(40%の腎の障害時に上昇する検査項目)の上昇も認められず、排尿量も正常にみられたことから、一旦、退院とし、3日後に再度、診察・検査に来ていただくことにしました。

 

 

 

■ 3日後、元気も食欲もあり、オシッコもいつも通りとのことで、BUN(尿素窒素)・CRE(クレアチニン)の正常値であったことから、ひとまずは『 ぶどう中毒の心配ない 』ことをお伝えしたところ、『 安心しました。 今後、ぶどうを食べるときは気をつけます。 』と嬉しそうにお話下さいました。

 

 

■ 気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

 

 

 

獣医師 泉 政明

Page Top